障害者、特に車椅子ユーザーにとって外出先でのトイレの問題は重要です。いろんな障害者が居るので一般の施設や店舗で誰かに合わせたトイレの作りにすることはできないでしょうが、多目的トイレなどは複数のパターンがあっても良いのではないかと思います。
車椅子生活者が一人で外出先のトイレを利用するには、トイレの広さや便座の高さなどの微妙な違いが使える使えないの大きな分かれ目になることが多々あります。例えば、私がトイレを利用するためには次の二つが絶対に必要な条件となります。
- 車椅子が十分に入ることが出来る広さ
- L字型手すりが便座の前に立った時に向かって右側の壁に付いている
ここでは、車椅子生活者として直面している外出先でのトイレ事情、更には多目的トイレの問題について説明していきます。
目次
車椅子生活者が外出先でトイレに行けない理由
もし、この二点の条件が満たされていなかったらどうするのか?それは、そこのトイレを利用することを諦めます。なぜなら私がトイレをするときには次の方法でする必要があるためです。
- 車椅子を便座の向かって左側に止める
- 跳ね上げ式の左ひじ掛けを上げる
- L字型手すりにつかまりながら車椅子から便座へいざって移動する
- L字型手すりに左ひじをのせて右側お尻をあげて、ズボンと下着をおろす
- 車椅子の座席に手をのせて左側お尻をあげて、ズボンと下着をおろす。
このような工程をしないと私はトイレをすることが出来ないのです。更に言えば、たとえ車椅子が十分に入れる広さとL字型手すりが右側に付いていたとしても、便座の高さとL字型手すりの高さが合っていない場合も一人でトイレをすることが出来ません。
車椅子生活者がトイレに行けない原因
スムーズに便座に移るには便座の高さと車椅子の高さが同じでなければなりません。2〜3㎝高さが違うだけでも、私にとっては大きな壁になるのです。 同様に、L字型手すりの高さは、車椅子のひじ掛けと同じがプラス5㎝までの高さでないと、左ひじに力を入れることが出来ません。
残念ながら、ここまでぴったりと条件が満たされているトイレはなかなかありません。高さが違うだけの場合は、他の人に手伝ってもらっています。デイサービスに行っている時は職員さんに、就労支援B型の作業所に行っている時はそこのスタッフの方に、病院で検尿する時は看護師さんに一部介助をしていただくことにしています。便座の高さが違う場合は、車椅子から便座に抱えて移乗してもらいます。L字型手すりの高さが違う場合は、私が片側のお尻を上げている間にズボンと下着をおろしてもらいます。
多目的トイレが使えない人も居るということを知ってほしい
外出先のトイレで一番ショックだったのは、あるレジャー施設(名前は伏せておきますが)に行った時のことです。そこは身障手帳1級あるいは2級の障害者と付添人一人は入場無料で、多目的トイレも各階に設置されているとホームページに書いてありました。しかし実際にトイレに入ってみると、L字型手すりが左側に付いていたのです。先述したとおり私は右側でなければ使うことができません。もしかしたら他のトイレは、右側に手すりが付いているかもしれないと期待しながら違う場所のトイレに入りました。
「え!?ここも左側に手すりがついている」
諦めて他のトイレを探し入ると
「あ〜また左側だ」
施設内のすべての多目的トイレを見ましたが全部左側に手すりが付いていました。一か所ぐらい右側手すりのトイレを設置しておいてくれてもいいのに。結局トイレをすることが出来ないので家まで我慢して帰ってきました。
トイレの心配で遠出も諦めるしかない現状
この経験で、出掛ける際にした下調べの甘さを身に染みてわかりました。ただ多目的トイレがあるから大丈夫だろうと軽く思っていた結果だと思います。
「これからは出掛ける際にはもっと入念な下調べが必要なのですね」
そう考えると遠出をするのが怖くなって、今ではほとんど市内か隣市しか出掛けなくなりました。入念な下調べをするのが面倒なので、出先でトイレに行かなくても済む距離しか行かないのです。
「全面的に介助するから一緒に出掛けよう」と言ってくれる人がいれば、私の行動範囲ももっと広がるでしょう。また、視覚障害者の方が利用されているボランティアガイドを四肢障害者ももっと気軽に利用することが出来るようになれば、私でも遠出することが出来るようになると思います。
車椅子生活者が願う利用者目線のトイレ設置について
私が車椅子生活者として望むことは、レジャーや公共などの施設の方や工事施工の方にはもっと障害者が利用することを考えて設備を作ってほしいということです。手すりの件で言えば、すべて左側に設置するのではなくて、右側手すりのトイレも設置しておいてほしいです。障害者の中には半身麻痺の方もいます。例えば右半身麻痺の方は、便座から立ち上がる時に座っている時の左側(便座に向かってだと右になります)のL字型手すりの縦部分を持って立ち上がります。もしこれが反対側に手すりが付いていたら当然、手すりを握ることが出来ません。
このような方もいるということを認識していただきたいです。どうか、どこに出掛けるにしても障害者がトイレのことで悩まなくても済む世の中にしてください。