介護職員をしていれば給与明細に処遇改善手当の項目がありませんか?
ここでは、処遇改善手当がどのような仕組みで支給されているものなのかを事業者側の責任にも触れながら紹介しようと思います。
この記事でわかること
- 介護職員処遇改善加算とは
- 介護職員処遇改善加算の仕組みとルール
- 介護職員処遇改善加算を受け取れる人
- 実地指導で必要な介護職員処遇改善加算の対応
- 介護職員処遇改善加算の実務管理
介護職員処遇改善加算とは
そもそも介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)とはなんでしょうか。
処遇改善加算は平成23年度までの『介護職員処遇改善交付金』に変わるものとして平成24年度から実施が始まった制度です。
介護職員の給与が安いという社会の声に答えて国が介護職員の給与の原資の一部を事業者に補填することで介護職員の給与を改善することを目的に作られました。
要は「国が税金を元に介護報酬を少し多く払うからその分を全て介護職員の給与に加算して支給してね!」ということです。
介護職員の給与改善を目的としていて頻繁に議論が行われているので加算の区分や加算率などのルールも毎年度ごとに見直されています。
処遇改善加算の概要
処遇改善加算は介護報酬と利用者の自己負担により成り立っているので厳密に言えば税金と利用料を増やして介護職員の給与を上げ仕組みです。
基礎①:処遇改善加算の期間
介護職員処遇改善加算は1年度ごとに申請が必要な加算です。
継続という概念がありませんので毎年4月算定開始に向けて申請を出し直さなければなりません。
処遇改善加算の期間は年度と決まっていて開始は4月で終了は翌年3月の12か月で区切られています。
名称も『平成30年度介護職員処遇改善加算』や『令和元年度介護職員処遇改善加算』などのように元号年度+介護職員処遇改善加算となっています。
例え年度途中の1月に処遇改善加算の算定が始めたとしても3月には終了してしまうので4月以降も加算を算定したい場合は2月中に翌年度の処遇改善加算計画を出し直します。
今年度の処遇改善加算による報酬を翌年度に持ち越すことができませんので年度ごとに新しい加算になっているようなイメージです。
翌年度に持ち越すことができない点がとても重要です。
基礎②:処遇改善加算のルール
処遇改善加算の要点は次の通りです。(多いので項目で分けています)
支給ルールのポイント
- 支給対象は介護職員
- 支給金額のルールは運営法人が決めていい
- 年度ごとに処遇改善加算として得た介護報酬以上の金額を介護職員に還元しなければならない
※処遇改善加算の報酬額を年度中に全部精算できなかった場合、報酬額全額返還(※支給済みの分も含めて)という極端な罰則のある違反になります。
申請ルールのポイント
- 加算は翌年度へ自動継続されない
- 年度計画と実績の計2回保険者に届出が必要
- 支給ルールは法人としてある程度自由に決めることができる
- 複数施設運営の場合は保険者ごとに一括して届出が可能
- 支給金額が加算報酬額よりも1円以上多く無ければ不正となる
- 処遇改善加算を原資とする手当には含められない項目が多々ある※1
- 実績で支給不足や虚偽等があれば全額返還
計画書や実績報告書などの申請書類にしつこいぐらいに書かれているので申請に関わる人は一般的に知っているルールだと思います。
基礎③:実地指導の視点
実地指導では加算算定の有無をチェックされます。
しかし、ほとんど場合は加算を算定するのに必要な届け(計画書と実績報告書の有無)の確認だけで終わります。
保険者への届出の時にチェックしているので実地指導では計画書や実績の内容と相違がないことを確認する作業はしません。
実地指導で必要なのは、『職員に周知されているか』です。
実地指導の注意ポイント
- 支給ルールが職員に周知されているか(案内文書の掲示でOK)
- 実績(報酬額と賃金改善額)が職員に報告されているか(実績報告書の掲示でOK)
今まで複数の都道府県の保険者を含めて数十回の実地指導を経験していますが処遇改善加算の計画や実績についてその場で細かく確認されたことはありません。
保険者の職員も限られた時間で実地指導をするので処遇改善加算の詳細を確認することは困難であるということも要因の一つです。
処遇改善加算の実務
処遇改善加算の実務は主に申請と支給管理です。
多額のお金を管理することになるので法人の中でも重要な担当任務となります。
大規模運営の介護事業者なら会社の管理部門が給与とともに管理することもあります。
もし、申請担当者と給与を管理する人が別の場合は気をつけなければなりません。
必要なモノ
- 給与台帳
- 就業規則や給与規定など重要書類
- 代表者印
加算申請や実績報告書の作成時は会社の重要書類と代表者印を使うので担当者も重要なものを扱っているという認識が必要です。
敢えて詳細を書きませんが、やろうと思えば申請担当者と給与管理者を同じにするだけで不正し放題...という抜け穴だらけの制度でもあります。
全額とは言わずとも何らかの不正操作をしている法人は一定数いるはずです。
したがって、働いている職員側もしっかりとルールを認識して受給することが大切です。
実務の詳細
一つの記事にすると長くなりすぎるので処遇改善加算の申請と実績報告について詳細ページを別々に用意しています。
それぞれの業務に必要な記事に進んでください。
支給金額に疑問を持ったときの対応
もしあなたが管理者や生活相談員として処遇改善加算を受け取る職員から「利用者の数や売上に比べて支給金額が少ないんじゃないか?」と言われた場合どのように対応しますか?
支給額に対する疑問
全国や複数の市町村で介護施設運営をする法人の場合は法人として一括申請をしているはずです。
その場合、複数の施設を全体でまとめて支給管理をするので処遇改善加算報酬額は全施設に分配されることになります。
全施設で調整が行われるので国が案内している処遇改善加算の一人あたりの給与アップ例よりも少なくなります。
ですがもし、処遇改善加算を算定しているのに誰にも処遇改善手当や賞与が無い場合は危険です。
加算を算定する以上、支給の方法を明確にしなければなりません。
もし、誰も知らなければその法人は何らか怪しい手続き(不正)をしている可能性が高いと考えることができます。
立場が悪くなるので言いにくいかもしれませんが対応方法は次の通りです。
不正疑惑告発の簡単な流れ
- 施設の責任者や経営者に確認する
- 市役所の介護保険課指定指導係に該当する部署に相談
立場が悪くなるかもしれないけど許せなくて何とかしたい場合は先に転職準備をしておくことをおすすめします。
介護保険課が動き監査になると事業者自体が運営停止の処罰を受け事業者が破綻することも考えられます。
転職活動は働きながらこっそり始めることをおすすめします。