介護の現場で遭遇する臭いは独特なものです。
この臭いの原因は、尿臭や体臭、部屋の環境臭など様々な臭いが絡み合ったもの。
一度臭いが付着してしまうと、部屋に立ち寄った人にまで臭いが移るので人を遠ざける原因となってしまいます。
ここでは、この臭いの原因と対策について、考察していきます。
目次
臭いが招く社会的孤立
介護現場では、施設、自宅を含め様々な臭いが混ざってしまっていることがあります。
嫌な臭いがする場所には人が寄り付かなくなります。
例えそれが家族であっても。
臭いをケアすることは、本人の尊厳を保つことだけでなく、社会的な孤立を防ぐ大切な手段であることを理解して頂けたらと思います。
介護で関わる臭いについて理解が必要なポイントは次の通りです。
- 介護の臭いの原因
- 具体的な臭い対策の方法
- 臭いが孤立を招く理由
介護の臭いの原因
介護を必要とする人が居る部屋の臭いの原因は、体臭、生活臭、環境臭が混ざった混合臭です。
毎日の入浴が難しい人は、どうしても汗の臭いが染み付いてしまっていたり、オムツや尿パッドを使用していると、便臭や尿臭が部屋に溜まってしまいます。
体臭は、そのような状況で発生しやすい臭いで、生活臭は、台所や洗面などゴミなどから発せられる臭いです。
また、環境臭は自宅の場合はタバコや仏壇の臭い、施設の場合は、浴場の湿気臭や排気口の臭い、厨房や食堂の臭いなどです。
特に、介護施設の場合、この環境臭が主な臭いの原因です。
自宅の場合は、タバコなどが絡むと余計に臭いが酷くなり、介護士の中にはタバコの臭いを嫌う人も多いので苦痛を感じる原因となります。
タバコ、便、尿、ゴミ、これらの臭いが全て重なった施設や訪問先は、プロの介護士でもかなり辛くなります。
具体的な臭い対策の方法
臭いは、とても難しい問題ではありますが、すぐにできる対策はいくつもあります。
とはいえ、まずは臭いを発生させない環境を作り上げてそれを維持することが大切です。
ここでは、基本的な対策と、具体的な手段を対策として、一つずつ紹介します。
清潔を保ち臭いを発生させない
まず、臭いの対策の具体的な方法は次の通りです。
基本的なことですが、臭いが発生する原因のほとんどが清潔でなくなってしまっていることによるものなので、清潔を保つということが最も効果的と言えます。
- 身体の清潔を保つ
- 衣類を清潔なものにする
- 寝具を清潔に保つ
- ポータブルトイレは室内に置かない
臭い対策は、清潔な状態を保つことが一番です。
ですが、自力で生活することが難しくなった時、介護者がいかに清潔な状態を継続できるかが問題です。
この中では、特にポータブルトイレの設置がポイントです(関連記事:介護におけるポータブルトイレ問題について【考察】)。
ポータブルトイレは、臭いの大きな原因となるだけでなく、心理的なダメージも大きいので、なるべく離れた場所か、臭いを逃すことができる場所に置くようにしましょう。
部屋ごと除菌消臭する
介護をしている部屋でイヤな臭いが発生しているということは、その空気の中にカビだけでなく様々な菌も含まれている可能性があります。
高齢者の場合、免疫が落ちていることが多いので、この空気の中で生活すること自体にリスクがあります。
また、介護をする人にとっても肉体的にも精神的にも負担が大きくなってしまいます。
そこで、部屋ごと空気を清潔にする方法を紹介します。
わたし自身、この方法は介護だけでなく、風邪予防や、感染症予防などにとても有効と考えています。
ポイントは、次亜塩素酸!
次亜塩素酸は、強い酸化作用によって菌やウイルスを除去します。
更に、臭いの元を分解するので消臭効果も抜群な成分です。
最近では、ノロウィルスが流行ったときに、感染者の嘔吐物などを処理する時にも使われるほど、臭い対策と除菌に優れています。
安全性で言えば、プールや水道水の浄化にもずっと使われているものなので、実は私たちの生活に馴染み深いものです。
この次亜塩素酸を空気中に散布することで、部屋の空気を除菌するだけでなく、イヤな臭いの原因となっているカビや菌を分解して臭いを消してしまうことができます。病院などで使用されている方法ですのでかなり有効な手段です。
わたし自身、次亜塩素酸の効果にとても期待しているので、介護施設で掃除をする時は希釈した次亜塩素酸を必ず噴霧していました。
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臭いが孤立を招く理由
嫌な臭いがする場所は、人を遠ざけます。
家族が介護をできない場合、最終的に頼るのは介護サービスです。
嫌な臭いがする場所に誰も行きたくないと思いますが、それは介護士でも同じです。
仕事としては行きたいし、なんとかしてあげたい気持ちが強いのが介護士ですが、抵抗と良心の間で深い悩みが発生してしまうことも多いのが実情です。
特に高齢者の場合、家族を除けば他の人と関わることが少なくなります。
家族や介護士は、高齢者の社会交流や社会参加の要です。
それが無くなってしまえば、高齢者の社会的孤立を招きます。
ですが、いくらそれをわかってるとは言え、臭いの話題は本人含め、身近な人には相談しにくいですよね。
臭いの相談が難しい理由
家族の介護をしている人も、介護士も臭いに対しては同じ悩みを抱えています。
問題は、その臭いを本人がどう思っているかです。
本人もなんとかしたいと思っているのであれば話は早いのですが...そうでない場合は、少々厄介です。
臭いの悩み解決が難しい原因の1つとして考えられるのは、介護を受ける人の尊厳やプライドです。
臭いはとてもデリケートな問題です。
安易に指摘したり、積極的に部屋のニオイを変えた結果、相手を傷つけてしまい、酷く落ち込んでしまうことがあります。こうなると、介護士としては上司に怒られてしまうミスだったり、よくある失敗の1つです。
ですが、本当に悲しいことは、上司にミスを怒られることではなく、臭いのせいで大切な家族がその場に寄り付かなくなってしまうことではありませんか?
嫌われる臭いとは
タバコの臭いや、体臭、口臭、特殊なお香など、一般的に嫌われる臭いはたくさんあります。
介護に携わることになれば、食事臭や便臭が加わることも増えてきます。
赤ちゃんの臭いとは違って、いくら大切な家族であっても、これらの臭いに慣れるのは難しいのが現実です。
しかも、放置していると部屋や家に臭いが染み付いていきます。
そうすると、部屋に入った人に臭いが移ります。
その結果、会いたくても「臭いがイヤ」ということで、その場所へ向かう家族の足が遠のいてしまうのです。
介護が必要になってから、家族が寄り付かなくなってしまったと感じたら、もしかしたら臭いが原因かもしれません。
臭いが原因の離職
勤務先の施設がずっと嫌な臭いがしていたら精神的、肉体的に負担が大きくなります。
臭いが人を遠のかせるのは事実です。
そして、人を遠のかせるのは利用者や家族だけではありません。
実は、介護の仕事をする人が減っている大きな原因となっているのです。
介護士の臭いについての悩みは次の通りです。
- 臭いに苦しむ介護士
- 臭いがわからなくなる慣れの怖さ
臭いに苦しむ介護士
デイサービスで介護士をしていると、食事介助、トイレ介助、入浴介助があります。
デイサービスの利用目的が、自宅で清潔な状態を保つことが難しくなり、デイサービスで入浴や着替え、オムツ交換などをしてほしいといったものが多数です。
自宅ではできないので、施設に来る時には皆さんあまりキレイとは言えない状態で来ます。
そのため、どうしても施設全体の臭いが悪くなってしまいます。
そうなると、残念なことに施設に来る人はみんな同じような臭いになってしまうことも。
施設の臭い対策が不十分だと、施設内の空気も悪く利用者、職員ともに体調管理が難しい施設となってしまいます。
臭いがわからなくなる慣れの怖さ
施設で仕事をしていると、その場では臭いに気が付かないこともあります。
しかし、仕事終わりや休憩時間に外に出ると、臭いがハッキリとわかります。
介護の仕事をしていると、どうしてもイヤな臭いをまとってしまいます。
介護施設などで働いている職員さんの中には、仕事が終わったあとに別の用事で外出する時は、1回家に帰って、シャワーして着替えてから行く人も多いのではないでしょうか。
臭いを指摘する難しさ
臭い人、臭い部屋、本人にとっては当たり前の臭いでも、人からは不快な臭いであることはよくあります。
ニオイについて、あなたはどのように考えていますか?
ニオイは、『人間の個性が現れるもの』です。
人間も動物なので、ニオイで相性を判断することはあります。
ニオイに敏感な人、鈍感な人はいますが、誰もが不快な臭いを平然とまとっている人と一緒に居たいと思いません。
しかし厄介なことに、自分が発する嫌な臭いは自分では気付きにくいのです。
気付いて気にし過ぎるとウツになってしまうぐらい悩むかもしれません。
他人に「あなたクサイ」と、自分の臭いを指摘されると嫌な思いをすることは間違いありません。
ですが、自分がそのような臭いを発しているにもかかわらず、そのことを知らないまま外に出るというようなことの方が嫌ではありませんか?
そう考えるだけでも、ニオイって難しいですね。
臭い人が身近にいる場合、どのようにすれば良いのか。
次のポイントを理解して、さり気なく伝えてみましょう。
- 臭いを指摘できるのは誰?
- 臭いを指摘する時の注意点
臭いを指摘できるのは誰?
「あなた臭いよ」と、人から言われると傷つくけど、知らないまま他人に不快な思いをさせてしまうのも嫌。
そんな臭いの問題を、最も真剣に考え、一緒に対策を考えることができるのは誰でしょうか。
それは、最も身近な家族です。夫であり、妻です。
高齢になると、臭いに鈍感になってくるので、その時は子も含まれるでしょう。
家族が居ない高齢者となると、もしかしたら介護士かもしれません。
そこには一定の信頼が必要になってきますので、Aさんは言っても大丈夫だけど、Bさんはダメということもあります。
相手を深く傷つけずに、臭いを指摘することが改善の第一歩となります。
臭いを指摘する時の注意点
臭いは人間の尊厳やプライドと直結するものです。
誰もが他人に自分の臭いについて指摘されると不愉快に感じると考えるべきでしょう。
そんな中、介護の仕事に携わっていると自分が高齢者の臭いを指摘し、改善を促す場面に遭遇することが出てくるかもしれません。
そんな時には次の2つだけ、気にしながら改善を促すようにしましょう。
- 本人が心を許していることと
- 適切なタイミング
高齢者介護の臭いの原因と対策のまとめ
臭いが強い利用者さんのところに家族など身近な人が寄り付かなくなっていませんか?
もし、気になる人がいたら、解決する方法を早めに考えて対策しましょう。
そして、これは在宅だけでなく施設でも同じです。
在宅の場合は、家族や友人が離れていきますが、施設は介護士など、その施設で働く人が離れていってしまいます。
良い介護をするためにはだけでなく、良い介護を受けるためにも、その場所が良い環境であることが実は何よりも重要であることを知っておいて欲しいです。
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