介護保険事業は介護保険による報酬で事業が成り立っているため、全て法令に定められた基準や要件を守り運営していく必要があります。
デイサービスでは、運営だけでなく、経営も管理者に任されていることが多いため、経営のポイントまで理解しておく事が大切です。
デイサービス経営について

現在、デイサービスは大きな転換期を迎えています。
通所介護、地域密着型通所介護、総合事業など介護予防を含め、一つの事業所が提供するサービスの種類が増えただけでなく、他の市区町村と基準が違うサービスも出てきました。
経営者さんだけではなく、施設の管理者さんや生活相談員さんも、経営と運営の両方の意識を持って運営していくことが大切です。
デイサービスを経営するにあたり必要なポイントは、次の3つです。
- 経営感覚 (ヒト・モノ・カネ)
- 法令遵守
- サービス
経営感覚について
カネの計算ができなければ事業そのものの継続が難しくなります。
ここでの『お金』は、利用料だけではありません。
施設を運営するための『お金』です。
お店や施設を経営する為には”人・物・金”の全てにおいて重要となります。
介護は、サービスの向上や社会貢献を目指す意識が高い反面、利益の追求を避ける傾向があります。
しかし、利益が出なければ事業所の存続が不可能となってしまいます。
法令遵守について
デイサービスは介護保険サービスなので、介護保険法に従って事業を行わなければなりません。
多くの事業を扱う大企業でも、法令遵守の意識を持たずに全て現場に一任した場合、施設が法令違反を行っていても把握できず、気付いた時には担当者が逃げて居なくなり、どうしようもない状態に陥ることもあります。
事業所が法令違反をしたとなれば、介護報酬の返還や追加金の請求、事業停止など経営上重大な問題が発生します。
売上金の元になるサービス提供の前提には、法令遵守の徹底があるということを強く認識しておくことが大切です。
サービスについて
サービスの方針が明確でなく、質が低ければ利用者を獲得する事ができません。
更に、利用の継続性が低くなり、いつまでも赤字営業を抜け出す事ができなくなる悪循環。
利用者目線で言えば、サービスの質が低ければ利用をする目的がなくなります。
利用者が求めるサービスを提供することができるように施設作りを行わなければなりません。
その為にも、地域におけるニーズの特性や周囲の環境、競合の他施設についてもしっかりと調査し、地域にとって必要とされるサービスを提供できる場にしていくことが大切です。
デイサービスの運営について

デイサービスを運営していくためには、運営のルールを知っておく必要があります。
少なくとも、施設の責任者である管理者さんはこの知識は必須です。
デイサービス運営の主な基準は次の通りです。
- 設備に関する基準
- 人員基準
- 運営基準
デイサービスは、主にこの3つのルールがベースとなり、運営されます。
設備に関する基準について
デイサービス事業を始めるにあたり、指定を受ける為に必要な基準です。
基準を一つでも満たすことができていなければ、指定を受けることはできません。
主な基準は次の通りです。
- 食堂及び機能訓練室の面積(利用定員1人あたり3平方メートルの確保)
- 静養室の確保(スペース及びベッドの台数など)
- 相談室の確保(遮蔽物の設置など)
- 事務室の確保(書類や備品を管理できる場所の確保)
- トイレ(台数、シャワーの有無など)
- 浴室、脱衣室(形態及び手すりなどの安全面配慮)
- 室内の動線確保及び手すり、段差解消などによる安全面確保
基本的には、利用者さんが満足なサービスが受けられると考えられる最低限の設備が求められています。
人員基準について
サービスを提供するにあたり、施設は適切な人員配置を行わなければなりません。
人員の基準は、人数だけでなく、サービスを行う時間帯に定められた職種が確保されているかも大切なポイントです。
また、人員基準は施設の定員によって異なることに注意が必要です。
主な配置基準は次の通りです。
- 管理者 (常勤1名)
- 生活相談員 (提供時間を通して1名以上)
- 看護職員 (定員11名以上の場合1名以上)
- 機能訓練指導員 (1名以上)
- 介護職員 (提供時間に応じた配置が必要)
注意点
※定員10名以下の場合は介護職員か看護職員のいずれか1名が必要。
※生活相談員または介護職員のうち1名は常勤であることが必要。
介護保険の人員基準では、”常勤”または”非常勤”の考え方が存在しており、人員基準や加算の算定要件においても影響があるので注意が必要です。
最近では、人材の確保が難しくなってきており、職員が不足する中で人員基準違反となっている事業所も見かけることがありますので人員の確保は計画的に行うことが大切です。
運営基準について
運営に関する基準も法令などにより定められています。
こちらも違反すると、運営基準違反となり、罰則などが適用されます。
サービスの提供を受ける利用者さんを保護する目的があります。
主な運営基準は次の通りです。
- 運営規定の整備
- サービス提供内容の説明・同意について
- サービス提供の拒否について
- 通所介護計画の作成
- サービス提供の記録
- 衛生管理
- 緊急時の対応
- 秘密保持について
- 苦情、事故発生時の対応について
- 会計について
運営基準は施設がサービスを提供するにあたり、利用者に対してしっかりと説明し、同意を得ているかがポイントとなります。
職員一人一人が自らの業務を理解し、責任を持って取り組んでいれば自然にできていることではありますが、人員不足による業務の多忙さや認識不足により疎かにされる傾向がある部分です。
そのため、実地指導に運営基準違反による罰則を受ける事業所も一定数あり、都道府県市区町村から厳しい指導対象となりやすい部分です。
まとめ
デイサービスの運営に関する基準は、業務を行う担当者がルールを理解し、責任を持って職務を果たしていれば何の問題もなく満たすことができるものばかりです。
しかし、最近は職員の確保が困難となってきた影響で業務に歪みが出てくることが多いのも確かです。
今後は更に、働き方改革を上手に実行するとともに、処遇改善加算などを使い、職員さんの給料を上げることで人員の確保を進める必要があります。
人員不足は業務の抜け落ちや違反を招くことが多いので、経営上の課題として時間的に余裕を持った人材確保の仕組みが必要となってきています。