毎年10月頃になるとインフルエンザの予防接種が始まります。
最近では9月頃から流行が始まることも増えてきており介護施設においても早めの対策を対応を検討しておく必要があります。
ここではデイサービスのインフルエンザ対策をお伝えします。
この記事でわかること
- 学校と違って会社にはお休みルールは無い
- よくある職員さんからの質問
- インフルエンザ感染者が出た時のデイサービス管理者の対応
- 感染症で出勤停止になる場合
- 会社としてのインフルエンザ対策
目次
学校と会社のルールの違い
主に幼稚園から高校まで在学中にインフルエンザに感染すると一週間ぐらい休むように言われますよね。
これは学校保健安全法というものに基づいたものです。
学校保健安全法のポイント
子供が集団生活を行う学校でインフルエンザ感染が起こると子供だけでなく家族を通じて地域にまで広がってしまう恐れがあることから出席停止や学級閉鎖及び学校閉鎖の措置が取れるようになっています。
しかし、学校以外にはそのような法や規定はありません。
それを知らないためにインフルエンザに感染してしまったときにどうすればいいのかわからなくなってしまう職員さんもたくさん居ます。
注意ポイント
介護施設に勤める職員さんは小学生から高校までの子供を持つ方がたくさん居るのでどうしても学校と混同してしまがちです。
インフルエンザに関する職員さんからの問い合わせへの回答例
企業に勤めていると少なからずこのような事例に遭遇することはあると思います。
稀に「何があっても休むことは認めない。死んでも来い」というようなことを指示する会社があるみたいですが会社としての対応の前にまず人としての対応を考えましょう。
メモ
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ですが、職員さんもなぜそんなことを聞いてくるのかと疑問になるような質問をする方がいることも事実です。
お互いがある程度のルールを知っておけばそのようなことは起きないかもしれません。
社会人は体調面に関しては自己管理なので無理はしないようにしてください。
もちろん、あらかじめ就業規則などで決めている会社もありますので先に確認したり流行時期の前に共有しておくと良いかもしれません。
ポイント
ここでの目的はデイサービスの職員が感染症になった時の対応を明確にすることです。
施設または会社として対応を考える必要があるのは発症者は職員さん本人のインフルエンザ感染についての参考になればと思います。
問い合わせ事例と回答
Question
自分がインフルエンザに感染しました。何日休めばいいですか?
ポイント
医療機関で受診して、医師の指示に従ってください。
「発症後5日を経過し、且つ解熱した後2日を経過するまで」
このルールは学校保健安全法で決められているものなので社会人は別となります。
感染拡大の恐れが無くなった時点で出勤をすることが望ましいですが発熱などの体調を見て自分で判断すると感染の可能性がまだ残っていることに気付かない場合もあります。
焦らずに治療日数を確保するか急ぎの場合は医師に確認してください。
Question
子供がインフルエンザに感染しました。自分は何日休む必要がありますか?
ポイント
通常通りに出勤で大丈夫です。
看病などで欠勤する場合は上長に連絡して通常の欠勤手続きをとってください。
実際によくある問い合わせです。
あくまで本人がインフルエンザに感染した場合の対応ですのでもし看病などをする必要がある場合は有給休暇や欠勤の手続きをするのが通常です。
注意ポイント
家族が感染症になった場合のルールは施設や会社で決めることはありません。
デイサービスの管理者が職員の感染症対応で知っておきたいこと
インフルエンザを含む感染症は自覚がない場合があったり人によって症状や重度が変わることがあります。
季節性のインフルエンザの場合は職員さん本人から休むと伝えたのであれば問題ありませんが会社が職員さんの勤務する意思を断り休むように指示すると休業命令にあたるということも知っておいたほうが良いでしょう。
ポイント
休業命令になると会社は休業を指示した職員さんに休業補償を支払うことになります。
この休業補償に対する考え方は会社により違ってくると思いますので是非についてはノーコメントとします。
会社側が休業補償を嫌がる場合もありますし職員さんも給料が減ることを嫌がり病気を隠したり無理をして出勤することがあります。
本来であれば休業補償を利用して感染の心配が無くなるまで欠勤してもらうことが一番良いことなのでしょうが会社側にも職員さん側にも事情があるのでうまくいかないこともあります。
インフルエンザ感染した職員さんへの対応方法
デイサービスのような介護施設で起きるインフルエンザ集団感染の媒介者はその施設の職員さんであることが多いです。
注意ポイント
職員さんは家族が通勤や通学で感染する機会が多いだけでなく自分の通勤中に電車での感染することも考えられます。
利用者さんに感染してしまうと命の危険となることもあるので注意が必要です。
感染症対策規定を作ることが重要
インフルエンザは毎年流行するものですしその他にも急に流行が始まる感染症もあります。
そんな時に問い合わせが無くならない原因はルールが無いからです。
一番簡単なのは会社として施設として『感染した場合はこうすればよい』ということがわかるものを作っておくことです。
規定作成の流れ
- 就業規則や対応フローに感染症に関する事項を定める
- 周知する
- 感染症対策研修などの機会にしっかりと共有する
会社または施設としてルールを共有するツールがあればこのような問題はすぐに解決します。
感染者職員への対応
感染していると言う職員さんを強制的に出勤させるような施設は無いと思います。
しかし感染しているのに出勤することを望む職員さんが居た場合は会社としての対応を考えておいた方が良いでしょう。
注意ポイント
感染していることを自覚しながらも出勤を望む職員さんがいます。
ほとんどは経済的事情か本人が感染症のリスクを認識していないことによるものなので就業規則などを元にしっかりと周知することが重要です。
ポイント
感染が疑われたり感染している職員さんには『体調を気遣い有給休暇などを取得して医師の許可が出るまで休むように促す』という対応が無難です。
休業補償をもって休みを指示する場合は職員さんに診断書提出などの条件を付けるのもいいでしょう。
職員である自分が感染したときの対応
インフルエンザに感染しているのに出勤を押し通すことは自分や施設だけでなく利用者さんに対してリスクしかありませんのでちゃんと休みましょう。
有給休暇が無い場合などどうしても給料面で厳しくなるなどの問題がある場合は完治後のシフト調整などについて相談できるようにしておきましょう。
注意ポイント
この程度なら大丈夫という考えがあるのであれば『感染による症状がある状態で介護をしたり送迎で車を運転した場合にどういうリスクがあるか』を一度考えてみてください。
昔、わたしが最初に勤務していたデイサービスに周囲の反対を聞かずに体調が悪い状態で勤務して送迎車で子どもを巻き込む衝突事故を起こした職員が居ました。
そのことがきっかけでうつになり1年ほど休職する結果となりました。
注意ポイント
介護や送迎は常にリスクが伴う業務ですので体調管理は本人だけでなく施設としても責任があります。
感染症と出勤停止の例外
季節性のインフルエンザとは別に感染症が発生した場合の対応として第一類~第三類に当たる感染症と診断された場合や新型インフルエンザ等に分類される感染症と診断された場合は会社ではなく法律により強制で出勤停止命令を行う事があります。
以下の表にまとめているので参考にしてください。
根拠法令
条文 | 出勤停止命令者 | 就業規則記載の可否 | 休業手当支給の必要性 |
感染症法第18条 | 法律による強制及び 都道府県知事 |
不要 | 不要 |
労働安全衛生法第68条 | 法律による強制 | 不要 | 不要 |
労働契約法第5条 | 事業主 | 必要 | 必要 |
感染症の分類と根拠法令に基づく就業制限
分類 | 感染症の例 | 就業制限 |
一類感染症 | エボラ出血熱・痘そう・南米出血熱・ラッサ熱 など | 就業禁止 ※法律による出勤停止 |
二類感染症 | 急性灰白髄炎・結核・ジフテリア ・鳥インフルエンザ など | 就業禁止 ※法律による出勤停止 |
三類感染症 | コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性・大腸菌感染症・腸チフス・パラチフスなど | 就業禁止 ※法律による出勤停止 |
四類感染症 | E型肝炎 ・黄熱 ・狂犬病・炭疽 ・マラリアなど | 企業規定による (国からの制限はない) |
五類感染症 | インフルエンザ※・麻しん・風疹・AIDS・梅毒 など・ノロウィルス ※鳥インフルエンザおよび新型インフルエンザなど感染症を除く。 |
企業の規定による (国からの制限はない) |
新型インフルエンザ など感染症 他 |
新型インフルエンザ・再興型インフルエンザ | 就業禁止 ※法律による出勤停止 |
インフルエンザを含む感染症の対応を会社や施設としてまとめると一類から三類及び新型インフルエンザ等感染症他に分類されるものは法律により出勤停止、四類五類は企業の規定によるとなります。
注意ポイント
鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ以外の季節性インフルエンザ、ノロウィルスは五類にあたるため法による出勤停止命令の対象外であり企業判断となります。
五類感染症は感染していても就業制限はないので従業員を休ませる場合(会社からの出勤停止命令)は「会社都合の休職( 使用者の責に帰すべき事由による休業)」となります。
注意ポイント
法律による出勤停止の場合は無給なので有給休暇の取得などが必要
介護職員がインフルエンザに感染したときの理想的なフロー
感染症はだれもがかかるリスクがあるものなので対応は冷静かつ公平に行うようにすべきです。
正社員やパートでの不公平や職種による不公平が無いように考えることが理想です。
また、感染してしまった職員さんへのフォローも忘れないようにしましょう。
介護職員がインフルエンザに感染したときは次のようなフローが理想かと思います。
簡単な流れ
- 感染が疑われたらまず医師の診断を受けましょう
- インフルエンザと診断された場合は医師の診断をもとに何日程度の欠勤になるかを管理者に報告します
- 管理者は運営に支障がある場合は代替職員など調整対応をします
- 感染が拡大しないように施設全体に注意を促す
職員及び施設としてできるインフルエンザ対策
インフルエンザ感染対策で大切なことは感染しないように普段から体調管理や衛生管理に努めて予防することです。
感染予防に有効なこと
- 手洗いうがい
- 消毒
- 口腔衛生ケア
- 睡眠
基本となるのは手洗いうがいや消毒ですが実は睡眠と口腔衛生も重要なんじゃないかなと思います。
睡眠は体調管理に大きく影響するので体力維持のためにも必須です。
口腔衛生は菌を体の中に入れないようにするためにも良い状態にしておくことが良いのではないでしょうか。
次にできることはインフルエンザの流行が本格的に始まる前に予防接種を受けておくことも有効といえるでしょう。
受けることができない人もいますが完全に感染を防ぐことはできなくても予防接種の型と流行しているインフルエンザの型が合えば症状は軽くて済むかもしれません。
重要な対策方法
- 感染した気がしたら病院に行く
- 他人に移さないように徹底する
- 利用者さんを含め感染が疑われる症状が出ている人に対して積極的に受診を促す
また、これらの対応に関しては定期的に感染対策について施設内研修を行い周知徹底していくことが有効な手段です。