世帯分離とは住民票に関する手続きの一つです。
引っ越しした場合は速やかに自治体に転出届と転入届を提出し住民票を移することが義務とされています。
それによって国民健康保険や税金などの支払管理も自治体側によって移し替えられます。
目次
世帯分離とは
親元から離れて一人暮らしする場合などは単純に家族が住む住所から離れ新たに住民票を取得する流れが一般的です。
国民義務の対象である納税や保険などは収入が同じ世帯でも家族構成などによっても負担が変わる場合があります。
その結果、一部の高齢者を含む世帯や貧困世帯では社会保険料の支払いが困難になったり高齢者サービスが高額になってしまい過度な負担が生じる場合があります。
ポイント
世帯分離は住まいを変えずに構成員を別の世帯に異動させる手続きです。
介護保険料などの社会保険は収入に応じて支払い金額が変わるので収入が無い人を世帯分離をすればその分保険料等を安く抑えることができて生活を安定させられる可能性があります。
更に高齢者など年金収入だけで労働年齢ではない人が世帯分離をすることによって生活状況が困難であれば社会保障制度等も受けやすくなります。
世帯分離の手続き
世帯分離は市役所等で手続きをします。
印鑑と本人確認書類があればすぐに終わる簡単な手続きです。
通常は市民課など住民の転入や転出を扱う部署で手続きをすることができます。
メモ
手続きは世帯主の他にも世帯員や委任状を持った代理人でも手続き可能です。
世帯分離のメリット
世帯分離をするメリットが大きいのは高齢者を含む世帯です。
介護保険料の納付や介護保険サービスを利用する場合の負担率は世帯の収入によって金額が変わります。
この世帯収入は住民票の構成員でまとめられます。
ポイント
息子夫婦などと暮らす世帯であれば働き世代の収入がある分だけ介護保険等の金額が上がり介護保険サービスの自己負担割合も高くなってしまっていることがあります。
そのような場合に世帯分離をして単独世帯にすれば収入が低いので負担を抑えることができるようになります。
世帯分離のデメリット
世帯分離のデメリットは大きく2つあります。
メモ
- 働き世代の世帯にいる場合に扶養等の扱いを受けれていたものが受けられなくなる
- 会社員の場合は扶養手当や家族手当など養う家族が居ることが条件で貰っていた手当が無くなる
これにより75歳以下の人が世帯分離したあとは国民健康保険料の負担が大きく増えることがあります。
更に会社員の場合は手当等がなくなる可能性があるので収入が下がってしまいます。
したがってマネー相談などを受けてメリットがあるかどうかを確認することが必要かもしれません。
世帯分離で生活保護は不可能
世帯分離をうまく使えば収入の無い構成員を世帯主とすることで生活保護などを受けることができるのではと考える人もいるかもしれません。
しかし生活保護上の審査は厳しいので同じ場所に普通に暮らすことができる家族等が居る場合は世帯分離をしても生活保護を受けることはできません。
注意ポイント
世帯分離の手続きと生活保護受給の審査は別です。
この部分には注意が必要です。
生活保護は世帯分離によってではなく家族を含め本当に厳しい状況になった上で他の支援が届かないところに居る場合に受けることができるかと思います。
夫婦間の世帯分離
子供を持つ若い世代が世帯分離をすることによって世帯収入が減らせるのではないかと言われることがあります。
保育園の料金等は収入に応じて変わるのでどちらか一方を収入を少なくしておけば世帯分離するだけで料金を抑えられるのではないかと一度は考えたことがある人も居るのかもしれません。
しかしこの場合は夫婦の収入が基準となります。
メモ
世帯分離をしても結婚している夫婦であることには変わりありませんので世帯分離のメリットは全く無いと考えられます。
逆に会社員としての給料で家族手当等があればそれが無くなる可能性がありデメリットの方が大きくなることがあります。
もし保育園の料金を下げたいと考えるのであれば離婚しシングルの支援を受けながら利用するといった方法がありますがそこまでするかどうかは人それぞれの判断です。
世帯分離には理由が必要
高齢者の場合は税金の金額が下がったり介護保険や医療の負担が減るなど世帯分離をすることのメリットは比較的大きいとも言われています。
しかしそのようなメリットがある世帯分離は悪用されることもあるので自治体側も一応の確認はするようです。
受付や対応時間から考えて詳しく審査をしているといったことは考えられないのであくまで水際確認といったところではないでしょうか。
確認方法は窓口担当者からの簡単な質問です。
世帯分離を断られる場合
世帯分離の手続きをするためには適した理由が必要です。
絶対にNGなのは生活保護の受給を目的としていることがわかってしまうことです。
ポイント
適した答えは一般的なものでよく高齢になった親の介護にかかる費用負担が大きくなって困っているためという理由で十分だと思います。
注意ポイント
もし世帯分離の目的が生活保護の不正受給の場合は生活保護受給の審査で落ちる可能性が高く更に虚偽申告等によって罰則の可能性もある。
そうなれば本当に生活保護が必要になった場合など社会保障制度が必要になった時に利用することができないということも考えられるのではないでしょうか。
世帯分離で不正はできるか
日本では不況や災害などによって被害を受ける人に対する支援や自治体等が行う企画で世帯ごと現金や物を支給するといったことがあります。
もしこのような場合に不正をして2世帯分やそれ以上の受給を考えるのであらば世帯分離が有効と考える人がいるかもしれません。
世帯分離は至って簡単な手続きで終わるので望めばすぐにできてしまうのではないでしょうか。
ポイント
完全に自己責任の領域ですが説明等の詳細をよく確認し更に罰則等もしっかりと確認しておくことが重要です。
そのようなタイミングで介護保険サービスを利用している高齢者を含む働き世代の世帯が世帯分離をしたいと手続きをしたら恐らく普通に手続きは完了します。
タイミング的に疑われることがあるかもしれませんが立証などは難しいので現実的には通常通りに手続きが進むでしょう。
ですが夫婦の場合はこのようなタイミングで無理に世帯分離をすると家族手当が消え収入が減るだけでなく不正がバレたら何か悪影響が出るところもあるかもしれません。
もし世帯支給イベントに備えるのであれば一度離婚して別居するのがベストかもしれませんね。
構成員が家族ではない世帯
世帯とは住民票上のものなので一つの住民票ごとにそれぞれ世帯が存在することになります。
そしてこの世帯は必ずしも家族であるとは限りません。
人それぞれの生活によりたくさんのパターンがあるようですが次のようなことが考えられます。
メモ
- 独身の世帯
- 親子などで構成されるの家族世帯
- 未婚でも複数の人で住民票を一つにした世帯
未婚でも住民票を一つにした場合は一つの世帯として認められます。
同棲する場合も速やかに前住所の転出届と同居する住所への転入届を提出して一つの世帯としなければなりません。
未婚世帯の続柄の記載
住民票の続柄には「本人」や「妻」「子」などの他に「同居人」という関係を記載することができます。
内縁や同棲の場合は未婚扱いなので「妻」や「夫」などを使うことができません。
したがって世帯主以外の一方を「同居人(または未婚の妻)」と記載することになります。
最近は未婚世帯やLGBTなど結婚が認められていないカップルも一般的になりつつあります。
その場合の住民票手続きでは世帯主以外の一方を「同居人」とすることが多いのではないでしょうか。
同居人の世帯分離
多くはない事例でしょうが同居人を世帯分離することのメリットは少ないのではないでしょうか。
注意ポイント
一般的な健康保険等では家族(内縁関係を含む)以外は扶養の範囲内に入ることができません。
内縁関係であればその状態のまま高齢になった場合には通常の世帯分離と同様のメリットが考えられますがそれ以外の場合はそれぞれが独立したものとしての扱いになりますので世帯分離をするメリットもデメリットもありません。
同居人の場合は世帯分離を考えるようになる前に結婚もしくは転出(離別)のどちらかに進むことが多いのではないでしょうか。
世帯分離は高齢者を含む世帯なら考えられる手段の一つ
世帯分離することでメリットがあるのは介護保険サービスを受けている高齢者が居る世帯です。
世帯分離は保険や税金や医療介護費用の負担によって生活が不安定になってしまう世帯を救済するための手段の一つです。
このことを認識して本当に必要になった時にマネープランやライフプランと合わせて正しく手続きを行いましょう。